すったもんだ日記帳 Yuriko Hara’s Blog

Pianist 原 由莉子 のmusikalischな日々

ベートーヴェン物語 第三話 曲目解説②

4.ピアノソナタ第23番『熱情』

 

間違いなく、中期のピアノ曲の最高傑作、熱情。

 

曲の持つエネルギー、スケール、技術の難易度、全てにおいて

ピアノソナタという枠からはみ出している、大変ドラマチックな作品です。

『悲愴・月光・熱情』 で、ベートーヴェン3大ピアノソナタと称されるので

少なくともタイトルは有名ですね。

 

 

交響曲『運命』と同時期に作曲されていたことからか、『熱情』の一楽章にもあの有名な運命の動機「タタタ・タン」が使われている(・∀・)

 

ベートーヴェンがヨゼフィーネへ送った手紙の内容がすごく熱(苦し)くて。

「愛するJ、あなたは私の全ての感性を虜にしています。」などと書いている。

そんな炎のような思いの丈がこのソナタにも込められているなぁ、と。

 

曲調がどんなに静かになっても、激しい感情は滞ることなく渦巻き続けている、精神的にすごく熱い作品です。

 

 

 

が!精神的な難易度以前に、物理的に弾くのが難しすぎてびびった😭

 

ワルトシュタインもそうやけど、このあたりテクニック的にめっちゃ難しくなる。

 

それは時代によるピアノの発展によって、楽器そのものが大きい音が鳴るようになったり、鍵盤の数が増えたりしたことと大いに関係があり

作曲家の求める理想の音楽もどんどん複雑になっていってピアニストへの要求も大きくなっていったからなんだろうなぁ、と。

 

音楽的表現のことはもちろんのこと、テクニック・メカニックの腕を落とさない地道な練習もちゃんとしよ、と思い知らされた、初・熱情でございました。(爆)

 

 

 

 

5.ピアノ協奏曲第5番『皇帝』

 

こちらも皆さまご存知皇帝\(^o^)/今回は二楽章をとりあげました。

 

「皇帝」といえばこの時期は「ナポレオン」ですが、この時のウィーンはフランス軍から攻め込まれていて、ベートーヴェンの立場からするとナポレオンは敵…。

なので、決してベートーヴェンがナポレオンを称えて書いた曲ではありません。

出版したクラマー(この人も作曲家!有名なエチュードがあるよ!)が堂々とした曲の雰囲気からつけたものだと思われます。

 

 

皇帝といえばなんと言っても一楽章出だしが超有名ですが

今回は大好きな二楽章を弾きました♫(というかちょうどいい一人で弾けるとこがあんまなかった 笑)

 

音域の広い鍵盤の使い方に注耳👂

ベートーヴェンが、どんどん改良されるピアノをいかに効果的に使ってやろうか、という思いで作曲しているのがよくわかる。

 

ペダルも踏みっぱなしの指示が。持続するベース音の上に、星屑のような高音が混ざり合う響きは、本当に感動的……✨画期的すぎて、当時は全然流行らなかったそうですが……。

 

あ〜!私、5曲あるベートーヴェンのピアコンの中ではまさかの皇帝が一番好きなので(だいたいのクラシック好きな人は、4番と言う。5番は多分名曲すぎてなのか、まず挙がらない)

オケと弾きたい〜。弾きたい〜〜〜!!!!

 

 

6.エリーゼのために

 

エリーゼのために、の「エリーゼさん」は

実は「テレーゼさん」である、

というトリビア?は結構有名ですよね。

 

ベートーヴェンの字が汚かったので、出版社がエリーゼと読み間違えた、というやつです。

 

 

ピアニストのコラムなのでもう一歩踏み込むと

 

このテレーゼさんは、さきほどから登場している、ピアノソナタ24番のヨゼフィーネの姉のテレーゼさん、、、ではなく

また別のテレーゼさんのことなのです!ややこしい!!!

 

ベートーヴェンはヨゼフィーネの姉のテレーゼさんと破局した直後に、このエリーゼのテレーゼさんに惚れて、エリーゼのためにを書きました。

誰でもええんかい!!!

 

 

そしてさらに踏み込むと………

 

このエリーゼのテレーゼさんの叔父さんはマルファッティというお医者さんだったのですが

後に、20歳のショパンがウィーンにやってきた時、演奏の場を提供して若きピアニストを応援したり

さらにはポーランド人であることが理由で外国移動が難しいショパンのため、ウィーンからパリ行きの許可をおろさせるために手を尽くしたそうです。

 

えーーーいきなりショパンーーー!!!

すげぇーーー歴史すげぇーーー!!!!

 

 

話がずいぶんと逸れてしまったけど、この曲の話をしよう。

 

ベートーヴェンの曲って、音がに積み上げられている印象なんですが

エリーゼのためには、右手も左手も、両方ともうつろうようなで書かれているのが、あんまりベートーヴェン「らしくない」作品やなぁ、と思いながら弾いていました。

部屋でそこにいる人と紅茶でも飲みながらお話していて、その合間にサッと書き上げた……そんな雰囲気を感じます。

 

 

イ短調ってめっちゃメランコリックで

落ち着かない・行き着く先がない・常にゆらゆら揺れているというイメージがあるんだけど

(シューベルトのアルペジョーネとか、シューマンのピアコンとか!)

エリーゼのためにもまさにそうで!!!!!

 

全然安定しないそわそわした気持ちがずっとある。

冒頭の指示も「Poco moto 」=ちょっと動いて。なんじゃそれ。見たことない。

 

決して活発に動くわけではなく、「動かされてる」みたいな揺らぎ方なのかな。

なんという絶妙な言葉の使い方……ッ!!!

と、言葉フェチの私は大変感動しました。

 

 

 

いわゆる「有名曲」多めでお送りした第三話!いかがでしたか?

こうしてみると、ベートーヴェンの作風はほんとにバリエーションが豊かよな……

でもどこかに確固とした「ベートーヴェンらしさ」があるのがすごい。

 

 

次回、第四話は最終回です。さて一体何を弾こうかな?どこをとってもだいぶ渋い。

脚本書くのも気合いが入ります。

頑張ります!!!