8月の誕生日にアルゲリッチの映画を観て考えた、緊張との付き合い方について
誕生日の記念に心に何かを残したいなと思って
今更!?というタイミングですが、マルタ・アルゲリッチのドキュメンタリー映画「私こそ、音楽!」をようやっと観ました\(^o^)/
具合(機嫌?)によって度々演奏会をキャンセルしたり、3人の元旦那や彼氏のことがスキャンダル沙汰になったり、自由奔放で困ったさんなイメージも少なくない彼女。
でもこの映画では、インタビュアーが娘のステファニーということもあってか
包容力のあるあたたかいお母さんの一面がたくさんあって新鮮やった☺️
でも、やっぱり印象に残ったシーンは
リハーサル中や、本番直前を撮ったもの。
リハで「わからない。自分でもどう弾きたいのかわからない。これではない。でもわからない………」と言って指揮者を困らせたり
本番(しかも日本公演w)前の楽屋からイライラしっぱなし、「いつ出るの?もう行くの!?」とプリプリしながら袖へ移動し
「最悪の気分よ、熱があるわ、弾きたくない、弾けないわ。」と言いながら舞台へ出て行く姿……………
あぁ、、、わかる、、、、その気持ちわかるよ、、、、(´⊙ω⊙`)
マルタ様に「わかるよ」なんておこがましいにもほどがあるけど、演奏家みんな「なんでこんなしんどい思いして演奏せなあかんねん」と思うことが必ず一度はあるんじゃなかろうか……
でも、演奏を仕事にしてる人はそんな姿を周りやお客さんには見せてはいけないし
そもそも自分のみっともない状態を露骨に表すことって、普通の大人だったら恥ずかしいから躊躇してしまう。
それを全部さらけだして見せてくれるアルゲリッチのピュアなことよ…🥺
そんなことができる人だからこそ、私達の心を直に触ってくるような演奏ができて
昔も今も世界的ピアニストとして生き続けていられるんやなぁと思いました。
それで思い出したのは、去年Twitterにピアニスト小林愛美ちゃんがアップしていた
本番直前の舞台袖での姿を撮影した動画。
チョコ食べる→栄養ドリンク飲む→楽譜見る→マネージャーさん?に手を繋いでもらって瞑想→背中を叩いてもらう→手を繋いでもらう(2回目)
………というなが〜い一連の流れを経て、やっっと舞台へ上がる
という動画だったのだけど
それを見た時の絶賛モラトリアム期だった私(注:2019年は人生最大に心が不調でした)は
それはそれはもうこの上ない衝撃を受けたわけです。
こんなすごい人でも、こんなに緊張と闘ってピアノ弾いてるんや!( ゚д゚)!!!
その時期、自分が緊張のせいで思うような演奏ができないことと、そもそも緊張なんかする時点で私ピアニストに向いてないんじゃないか?と本当に悩んでいたので
客席からは想像もつかない愛美ちゃんの姿にとても驚いたものです。
ちなみに、失礼ながら↑↑みたいなコメントをつけてリツイートさせてもらうと
とご本人からお返事をいただけたのはとてもいい思い出( ;∀;)❤️
演奏前のメンタル面のコントロールはまだまだ課題。
というか究極を言えばこれから先、一生これが全てな気がする。
年齢一桁やティーンの頃は、緊張したとしてもあんまり演奏に傷はつかないタイプでした。
弾き終わったあとで
「あんな速いテンポでよく最後までもったねー」とか
「家ではもっといろんな表情あったのに棒弾きやったで、もったいないー」とか親や先生に言われて
「へぇ、緊張してたのか。」と気づく感じで
手震えて弾けないとか、暗譜とんで左手なくなる、とかそういうはっきりわかる緊張はあんまりなかった。
でも本番前の時期は常にニキビが酷かったし、慢性的に便秘やったし、前日や当日に我慢できない胃痛で病院に運ばれることも何回もあった。
体はしっかり緊張や疲れのストレスを訴えていたんやけど
それがピアノへのストレスってことにもあんまり気づいてなくて
「こんな大事な時に体調崩すなんて自己管理がなってないダメな人間やなぁ!でもこのしんどい中でも指は動かさなくちゃ!この苦しみを乗り越えて、私はもっと上手になるんや!」
大事な時に体を壊すw時事ネタw
って、ふつ〜に思ってました(^ ^)
まじでなんの疑いもなく心からそう思ってました(^ ^)
・・・・書いてて、昔の自分がかわいそうになってきた。なんて勤勉な日本人気質(泣)
でもハタチ頃から【緊張による事故】が時々発生するようになり………
「本番は楽しいもの」という認識が、少しずつ「本番怖いな…」に変化してきた。
ウィーンでは、緊張してないように見える人達がうらやましくて
「緊張せずに舞台で弾くコンディションに持っていくこと」を心掛けて
たまに上手くいく時もあったけど、特に帰国が見えてきた留学生活最後の方は、邪念や気負いがありすぎて自滅ばかり……………
どんなに練習で弾けていても、本番崩れるんじゃ仕事にならない!そんなのピアニストじゃない!
と病みに病みまくり、帰国前はいろんな人にうじうじくよくよ話を聞いてもらいまくる日々。
こんな精神状態で学生を終えて日本で活動を始めるなんて……と、すごく辛かったです。
(相談に乗ってくれた皆さん、その節はありがとうございました………)
でも日本に帰ってきて、いろんな奏者の方とご一緒したり本番前の過ごし方を見ていて、ある時ふと気付いた……
「あれ?この人もしかして今緊張してる?」
「あれ?なんでこの人今こんな機嫌悪いん?」
日常生活が演奏活動であるような方々でも、本番前は極端に口数が減ったり、念入りに深呼吸したりストレッチしたりしている………!!!!!
さらにさらに音楽家だけじゃなくて
例えば嵐の松本潤様は、ライブ前「ルーティンの鬼」と化すらしい。
天皇陛下の前で歌う前の相葉さんは「めちゃくちゃ緊張してた(by.潤)」らしい。
芸人さんとかも、楽屋ではすんごいナイーブらしい。。。
知らんかった!!!!!!!!!
表舞台に立つことが仕事な人は、
緊張なんかしないから表舞台に立てるのや
と思っていました。
みんな緊張して当たり前なんやわ。。。
自分が昔そこまで緊張したことなかったから知らなかったけど
緊張するようになった今になって初めて見えたことでした。
じゃあ!
私も緊張していいんや!!!!
緊張しないように努める、ってことは体や心を不自然にねじ曲げたこと。
緊張してる自分を認めてあげて、その上でパフォーマンスをする方が
よっぽど自然なことやったんですね。
小さい時、コンクールやコンサートの舞台袖で泣いていたり、震えながらお母さんに手を握ってもらってる子のことを
「そんなことになるなら今すぐピアノやめたらいーのに」と冷ややかな目で見てたけど(性格悪!)
そういう子達はきっと心が少し大人やったんやね。
そしてそのことに今頃気付く、私の精神の未熟なことよ。。。( ;∀;)悲しいわ。。。。
でも逆に言えば、こうやって精神面の変化と向き合えるのは、音楽をやっているおかげやなぁとも思う。
いや、精神だけじゃなく身体的にも!
最近、数時間弾いた後には冷やしたりストレッチしないとすぐに腕がパンパンになったり
リンパが流れてないのが自分でもわかったり
こないだは腰を痛めてまともに歩けなくなったり←
ケアしないと危険が伴う身体になってきたし、今後はより一層悪化の一途を辿るのが当たり前な老化問題とはきちんと向き合っていかないといけない。泣
ピアノを弾くことで、繊細な自分の変化に気付くことができ
さらにその毎日生まれ変わるような新しい自分と丁寧に対話することができる。
なんだか人生の密度がすごく濃厚になる気がする…!
アルゲリッチも映画の中で
「『年をとったせいで演奏が変わった』と言われるのが怖い。」
と言ってた。
けどね、それに対して娘さんは
「ママは舞台に立てば立つほど若返る。」
と。
なんて…なんてステキなことなんでしょうか。
私もそんな風にピアノを通して、いい自分も悪い自分も見つめながら
年を重ねていきたいなと考えた、誕生日2020でありました☺️
おまけ
私のアルゲリッチにまつわる思い出といえばコレである。