ベートーヴェン物語 第二話 曲目解説②
ベートーヴェン物語第二話
またしても名曲、タイトル付きソナタ。
ベートーヴェンがこのソナタを作った際、弟子およびお世話係のシンドラーに対して
「この曲を理解するためには、シェイクスピアの『テンペスト』を読みなさい」と語った、という有名なエピソードから
この曲はテンペストと称されています。
が!!!!!
最近こんな本を読みました。
かげはら史帆著
「ベートーヴェン捏造 ー名プロデューサーは嘘をつくー」
耳が聞こえないベートーヴェンが周囲の人たちとのやりとりに使っていた会話帳を
ベートーヴェンの死後、シンドラーが書き直して改ざんしていたという話。
それによると、このテンペストの逸話や
交響曲5番に対して「【運命】はこのように扉を叩く」と語ったとされることまで
全てシンドラーによる嘘
だそうです。
…………………
今まで私たちが信じてきたこととは一体……(ToT)
しかしまぁこの本、めちゃくちゃ面白かったのでオススメ。
シンドラー目線のエッセイ調で書かれ、かなりカジュアルな文体も良いです。シンドラーが人間臭くてカワイイ。
そして曲にまつわる有名なエピソードは嘘やとしても、作品そのものの価値は変わりません。
作品31の3曲(16、17、18番)は、ベートーヴェンが自ら「新しい道」と称して作ったソナタ。(これは多分本当)
まさにハイリゲンシュタットの遺書を書いた頃に書かれていて、ベートーヴェンは心身ともに苦しみの真っ只中にいたんだけど
その中でも「これまでの自分を乗り越える」作品に挑み続けたことはすごい…。
テンペストはなんといっても幻想的な一楽章冒頭が印象的よね( ;∀;)
このレチタティーヴォがついてることによって、ものすごく個性的な自由な形式のもの聞こえる。
けど意外にも(?)、このソナタは3楽章すべて、きちんとソナタ形式で書かれているのです(`・ω・´)
ほんでまたこの「全楽章ソナタ形式」っていうのは、それはそれで今までになかった斬新な試みらしい。
なんだこの、裏の裏は表、的な。
ニ短調という調性を使っていることも興味深い。
d-mollといえばモーツァルトドン・ジョバンニ序曲とかピアコン20番とか、第九とか
はじめから、地獄(てことは天国とか)を表すテーマのものを書こうとしてた心意気を感じる。
三楽章は私はいつも「シューベルトみたいやな〜」と感じるんですが、皆さんはいかがでしょうか?🙂
静かな悲しみの波がひたひたと押し寄せてくるような感覚。
停滞してはいけないし、かと言って走ってもいけない。糸車のように終わりなく回り続けてはいるけど、疾走しているわけではない……この繊細なバランスが、演奏する上ですごく大切で難しい…。
4.ピアノソナタ第8番Op.13「悲愴」第二楽章
こちらも皆さんお馴染みシリーズ、悲愴。
ベートーヴェン三大ソナタと呼ばれる「悲愴」「月光」「熱情」のうち、唯一ベートーヴェンが自ら「悲愴」と名付けたソナタには
それだけ彼の【感情】が曲に込められてるのでは。
どっちも非常にドラマチックな性格を持つ調性。
でも、ニ短調は地獄とか神とか地球とか
人の手じゃどうすることもできない運命、
ハ短調の方が人間の心情の部分に関する運命
みたいなイメージが勝手にあります。
ソナタ1〜7番までの流れからすると、やっぱり8番は始まりから圧倒的に劇的だしね。
ピアノソナタに導入部をつけるってのは、ベートーヴェンの中ではこの8番が一番初めです。
そして二楽章。
ベートーヴェンの作曲法はモチーフを展開していく手法が主なので、よく「ベートーヴェンはメロディーを書かない」と言われるけど
このメロディーは言わずもがなみんなに愛される美しい旋律ですよね。そこそこフレーズも長いし。なんやねん、ちゃんと書けるやん!
でもこのメロディーの歌わせ加減がまた難しい…。
いっろーーーーーんな演奏があるけど、私はあまりテンポを揺らさない解釈(セクションごとのテンポはもちろん動く!)で弾いてみました。
ルバートで作るのではなくて、音の並びそのものの美しさを際立たせたいのと
やっぱりベートーヴェンは歌というより器楽の人かな、ということでヴァイオリン・ヴィオラ・チェロで弾いてるような表現を目指しました。
今回は有名曲多めになってしまって、プレッシャーが半端ない:(;゙゚'ω゚'):
それにしても、改めてベートーヴェン作品のバラエティの豊かさには驚かされるな。
返す返すも、こんな形でいろんな曲に触れられる機会があってよかったです💕
次回、第三話は10月更新の予定😎
次はいわゆる「名作の森」と呼ばれる時代からスタート!!ピアノ曲的にも引き続きアツくなりそうな予感……。