すったもんだ日記帳 Yuriko Hara’s Blog

Pianist 原 由莉子 のmusikalischな日々

ベートーヴェン物語 第二話 曲目解説②

ベートーヴェン物語第二話

https://youtu.be/xWmmE9QLER0

 

 

3.ピアノソナタ第17番Op.31-2「テンペスト

 

またしても名曲、タイトル付きソナタ

 

ベートーヴェンがこのソナタを作った際、弟子およびお世話係のシンドラーに対して

「この曲を理解するためには、シェイクスピアの『テンペスト』を読みなさい」と語った、という有名なエピソードから

この曲はテンペストと称されています。

 

 

 

が!!!!!

 

 

最近こんな本を読みました。

ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく



 

かげはら史帆著

ベートーヴェン捏造 ー名プロデューサーは嘘をつくー」

 

 

耳が聞こえないベートーヴェンが周囲の人たちとのやりとりに使っていた会話帳を

ベートーヴェンの死後、シンドラーが書き直して改ざんしていたという話。

 

 

それによると、このテンペストの逸話や

交響曲5番に対して「【運命】はこのように扉を叩く」と語ったとされることまで

 

全てシンドラーによる嘘

 

だそうです。

 

 

…………………

 

 

 

 

今まで私たちが信じてきたこととは一体……(ToT)

 

しかしまぁこの本、めちゃくちゃ面白かったのでオススメ。

シンドラー目線のエッセイ調で書かれ、かなりカジュアルな文体も良いです。シンドラーが人間臭くてカワイイ。

 

 

 

そして曲にまつわる有名なエピソードは嘘やとしても、作品そのものの価値は変わりません。

 

作品31の3曲(16、17、18番)は、ベートーヴェンが自ら「新しい道」と称して作ったソナタ。(これは多分本当)

 

まさにハイリゲンシュタットの遺書を書いた頃に書かれていて、ベートーヴェンは心身ともに苦しみの真っ只中にいたんだけど

その中でも「これまでの自分を乗り越える」作品に挑み続けたことはすごい…。

 

 

テンペストはなんといっても幻想的な一楽章冒頭が印象的よね( ;∀;)

このレチタティーヴォがついてることによって、ものすごく個性的な自由な形式のもの聞こえる。

 

けど意外にも(?)、このソナタは3楽章すべて、きちんとソナタ形式で書かれているのです(`・ω・´)

 

ほんでまたこの「全楽章ソナタ形式っていうのは、それはそれで今までになかった斬新な試みらしい。

なんだこの、裏の裏は表、的な。

 

ニ短調という調性を使っていることも興味深い。

d-mollといえばモーツァルトドン・ジョバンニ序曲とかピアコン20番とか、第九とか

はじめから、地獄(てことは天国とか)を表すテーマのものを書こうとしてた心意気を感じる。

 

 

 

三楽章は私はいつも「シューベルトみたいやな〜」と感じるんですが、皆さんはいかがでしょうか?🙂

静かな悲しみの波がひたひたと押し寄せてくるような感覚。

 

停滞してはいけないし、かと言って走ってもいけない。糸車のように終わりなく回り続けてはいるけど、疾走しているわけではない……この繊細なバランスが、演奏する上ですごく大切で難しい…。

 

 

 

 

4.ピアノソナタ第8番Op.13「悲愴」第二楽章

 

こちらも皆さんお馴染みシリーズ、悲愴。

 

ベートーヴェン三大ソナタと呼ばれる「悲愴」「月光」「熱情」のうち、唯一ベートーヴェンが自ら「悲愴」と名付けたソナタには

それだけ彼の【感情】が曲に込められてるのでは。

 

さっきのニ短調もこの悲愴や運命に使われてるハ短調

どっちも非常にドラマチックな性格を持つ調性。

 

でも、ニ短調地獄とか神とか地球とか

人の手じゃどうすることもできない運命

ハ短調の方が人間の心情の部分に関する運命

みたいなイメージが勝手にあります。

 

 

ソナタ1〜7番までの流れからすると、やっぱり8番は始まりから圧倒的に劇的だしね。

ピアノソナタに導入部をつけるってのは、ベートーヴェンの中ではこの8番が一番初めです。

 

 

 

そして二楽章。

ベートーヴェンの作曲法はモチーフを展開していく手法が主なので、よくベートーヴェンはメロディーを書かない」と言われるけど

このメロディーは言わずもがなみんなに愛される美しい旋律ですよね。そこそこフレーズも長いし。なんやねん、ちゃんと書けるやん!

 

 

でもこのメロディーの歌わせ加減がまた難しい…。

 

いっろーーーーーんな演奏があるけど、私はあまりテンポを揺らさない解釈(セクションごとのテンポはもちろん動く!)で弾いてみました。

ルバートで作るのではなくて、音の並びそのものの美しさを際立たせたいのと

やっぱりベートーヴェンは歌というより器楽の人かな、ということでヴァイオリン・ヴィオラ・チェロで弾いてるような表現を目指しました。

 

 

 

 

今回は有名曲多めになってしまって、プレッシャーが半端ない:(;゙゚'ω゚'):

 

 

それにしても、改めてベートーヴェン作品のバラエティの豊かさには驚かされるな。

返す返すも、こんな形でいろんな曲に触れられる機会があってよかったです💕

 

 

次回、第三話は10月更新の予定😎

次はいわゆる「名作の森」と呼ばれる時代からスタート!!ピアノ曲的にも引き続きアツくなりそうな予感……。